【書き物】 読書感想文
読書感想文
#1 - 『ザ・ビジョン』
【書名&副題】
ザ・ビジョン 進むべき道は見えているか
【著者】
ケン・ブランチャード(Ken Blanchard)、ジェシー・ストーナー(Jesse Stoner)
【出版社】
ダイヤモンド社
【定価&規格】
1470円 単行本ソフトカバー 全215ページ(18.6 x 13.2 x 2.2 cm)
【概要】
離婚した専業主婦、エリーがようやく見つけた仕事は中堅保険会社の経理だった。 その会社では毎朝、全社員にあてて「みなさん、おはよう。ジムです。」で始まるeメール・メッセージが入っている。 内容は人生の意義を語る寓話だったり、社員の手術の成功を知らせるものだったり、自らの価値観を明かすものだったり……。 ジムとは誰なのか?メールの目的は? エリーとジムとの対話を通じて、真のビジョンに不可欠な要素と、それを組織に根づかせるためにすべきことが説かれていく。 企業から個人まで、進むべき道を見失いそうになったとき拠りどころとなるバイブル!(カバーのあらすじより)
・りティな感想文 その1 (ネタバレ無し)

出版社の内容紹介にもある通り、これは、 大切だけれどわかりにくい「ビジョン」の創造と実践を、ストーリー形式でやさしく教えてくれる本です。 単なるハウツー本やお説教のような本と違い、主人公と一緒にさまざまなことを考えつつ、 ビジョンとは何か、そしてビジョンはどうやって作っていけば良いかを学んでいくことができます。

私がこの本を知ったきっかけは、あるファシリテーション系の本の中で、 ビジョンに関する良質の参考書として紹介されていたことでした。 「それじゃあ」とすぐにアマゾンで購入したものの、手元に届いてから実に半年以上、我が家の本棚で積読(つんどく)状態でした。 だってぶっちゃけた話、私は「ビジョンなんてちょっと大げさでかっこ悪いなぁ~」と思っていましたから。

ところが、その日は突然やってきました。 今後の自分の仕事の方向性と真剣に向き合うことを余儀なくされる事態が起きたのです。 基本的に目の前の与えられた仕事をそつなくこなすことで、何となくこれまでやって来れた自分。 そんな私はいったい何を軸に、今の仕事や今後の長いスパンでのキャリアを考えれば良いのか・・・。

そんな時、ふと手に取ったのがこの本でした。

たったの数時間でこの物語を一気に読み上げた私は、 それから1週間以上かけて、じっくりと自分の仕事のビジョンを練り上げていきました。 そうして出来上がった自分の仕事のビジョンを読んでいると、不思議と元気とやる気がわいてくるのに気づきました。 (う~ん、我ながら単純?!)

仕事でも家庭でも、人生において自分の進むべき道を決めなければいけない場面や、 進んでいる道が本当に正しいのかどうか自信を失いかけるような場面にぶつかってしまったら、ぜひこの本を読んでみてください。 この物語に散りばめられたヒントを元に、自分のビジョンをしっかりと固めれば、 きっと自然と、進むべき道や進みたい道が見えてくると思います。

『ビジョン』には永続性がある。ひとつの目標が達成されても、たえず次の方向性が示されるはずなんだ。 目標とビジョンを見分けるには、『次はどうするか』を考えてみるといい。 ビジョンがあれば、次にとるべき行動がはっきり見えるはずだし、ある目標が達成されても、次の目標が設定できるはずだ。 (p.102より)
・りティな感想文 その2 (ネタバレ度:中)※注意:ネタバレ有り!既にこの本を読まれた方向け

この本は2004年に翻訳本が出版されてから既に13年が経過していますが、内容はまだまだ色あせていないのではと感じます。 もちろん「ビジョンだけではどうにもならない」という批判があるのも理解できます。 でもこの本が主張する三つの要素「目的・価値観・未来のイメージ」をきちんと内包したビジョンは、 環境の急激な変化に直面しても、軸がブレさせることなく、かつ臨機応変に新たな目標を設定して積極的に行動することを 強力にサポートしてくれるものだと私は思います。

ところで組織の「ビジョン」が語られる際、しばしば一緒に登場する言葉に「戦略」がありますが、 みなさんは「ビジョン」と「戦略」の定義をどのように考えておられますか? 私は専門家ではないので正しいかは自身がありませんが、
「戦略」とは、ある目標を達成するために具体的に何をするのか
だと理解しています。では、この戦略とは、いったい何を目的に、何に基づいて、立てられるのでしょうか?

私はその答えがまさに「ビジョン」なのではないかと考えています。

ちょっと稚拙な例かもしれませんが、この「ビジョン」と「戦略」の関係を私の趣味であるお菓子づくりにたとえてみたいと思います。 我が家のお菓子作りのビジョンがたとえば 「安全な材料を使って(価値観)、家族に満面の笑みでおいしいね、と言ってもらい(未来のイメージ)、家族を幸せにしたい(目的)」 だとします。これに対し、戦略は 「ここに最高級の生クリームと無農薬のお砂糖があります。これで、いかにきめ細かい生クリームを泡立てるかが、 おいしいシフォンケーキを作るカギだから、とにかく一生懸命、丁寧に、かつ手早く泡立てること!」だとしてみます。

人はロボットではありませんから、仮に「生クリームを一生懸命泡立てることが成功のカギだ」という戦略を頭で理解できたとしても、 その成功とはいったいどういうことで、どんな意味があるのか、 また、どういう価値観に沿って行動すればいいのかを心で納得できなければ、 指示されたプラン・戦略に対して、熱意を持って自ら実行し続けることはできないと私は思うのです。 またこうしたビジョンがそもそもなかったり、あっても共有されないままに立てた戦略があるとすれば、 状況や環境が急に変化した時に、周囲の意見や流行によってコロコロと戦略が変わったり、 軸のブレた戦略を新たに立ててしまうかもしれません。 たとえば「よし、じゃあイカリスーパーでお砂糖も最高級のものを買って、一流のパティシエも唸るマカロンを作るぞ!」という具合に。(笑)

逆に、ビジョンがきちんと共有、理解、納得されていれば、万一家族の誰かが、突然乳製品アレルギーになってしまったとしても、 次の指示を待たずに「いま冷蔵庫の中にある安全な食材で、家族に喜んでもらえるものを作るには・・・ じゃあ、これを使ってあれを作ろう!」と自発的に考えて動くことができます。 ひょっとすると「あ、、お菓子じゃなくて、何かおかずになるものを作ってもいいじゃん!」という思い切った判断だってできるかもしれません。 だって、ビジョンのおかげで、目的や未来のイメージや行動指標となる価値観がしっかり頭に入っているわけですから。

従って、ビジョンは、一人ひとりが自ら考え、自律的に、熱意を持って行動できる、変化に強い組織づくりに、非常に大きな役割を果たすと私は思うのです。

さらに、この本の最終部、第10章以降では「ビジョンを現実にする」というテーマで、以下の3点の重要性と要点についてコンパクトにまとめられています。

  • ビジョンを創造するプロセス
  • ビジョンを伝えるプロセス
  • ビジョンを実践するプロセス

ビジョンづくりは現在進行形で、たえずそれについて話し合うことが重要であり、 ビジョンを支える習慣や行動パターンといった具体的な「構造」も必要であることなどが説明されています。 上記の3つのプロセスは戦略と密接な関わりがあるような気がしますが、さすがにそこまで深堀りしてしまうと、 「ビジョンの本」としてのフォーカスがぼやけてしまうので、私はこの本はこれで良いと感じています。

ただ、より実践的な経営のノウハウを求めておられる方々にとっては、 この部分があまりにコンパクトすぎて中身が薄いと感じられるようで、 それがアマゾンなどでも少数派ながら、低評価のレビューが存在するゆえんなのかもしれません。 (2011年11月現在、36レビュー中、★5つが20名、★4つが9名、★3つが4名、★2つが3名でした。) 従って、何人かのレビュアーの方々がご指摘の通り、ビジョンの意義については、 この本のようなビジョンに特化した書籍で理解を深め、具体的な戦略や組織開発の手法については他の本で補完する、 というのが良いのかもしれません。

登録日: 2011/11/12 コメント(1)
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